正面に礼

普段あまり気に留めないような事柄に疑問を呈するNHKの番組「チコちゃんに叱られる」は随分と人気があるようです。

 

「ボーッと生きてんじゃあねーよ!」

 

の決めゼリフが心にチクリときます。

 

時々、稽古見学に来られた方からの質問に言葉が詰まることもあります。以前にこんな質問を受けたことがありました。

 

「正面に礼!」ってなんですか?

 

私たちは稽古前の刀礼に始まり、正面に礼、師に対する礼、互いに礼などを行います。
刀や師、一緒に稽古してくれる相手に対する礼はわかりますが、「正面に礼」って何なのか?

 

確かに初めて道場に来た方や若い方には何のことやらわからないと思います。子供の頃から道場に通っていた私は何の疑問にも思いませんでしたが、その方から言われてハッとしました。

 

本来「正面に礼」は神(棚)に対する礼ですが、神棚がない場合やいろいろな問題等でそれが叶わない場合は「正面に礼」という形を取ります。

またこれは人によって違うのかも知れませんが、神様以外にも武術の先人、森羅万象に対する礼として行っている方もいるかも知れません。

 

礼は誤解されていたり、形骸化していたりします。昔、あり得ない礼法を教えていた会がありました。もちろん流派や会によって礼法は違います。しかし何に対して礼を行なっているのかをしっかりと認識せず、一律に場違いな礼を行うのは礼とは言えません。また気持ちが無い礼は形骸化します。

 

そう言えば、以前に稽古見学で訪れたある会では稽古前にかなり長い時間をかけて色々な方角に念入りに礼を行っておりました。先生のお人柄とともに稽古に対する想いが伝わってくるようでした。

 

稽古が再開された際には感謝の気持ちを込めて礼をしたいと思います。