折れる木刀

静稽会では時々、木刀の打ち込み稽古をします。

目的はちゃんと身体で木刀が振れているか?

力の伝え方、方向、打点は正確か?

などを確認するためです。

 

基本は受ける側は正面に立って両手で木刀を水平に構えます。構える位置は頭の高さくらいです。その他にもいろいろな打ち方を試します。

 

真っ向に打ち込んでもらうとわかりますが、斬りの「圧」がしっかりと伝わる人とそうでない人の差がよくわかります。

 

まず音が違います。腕の力だけで木刀を打ち込んでくる人の音は「カ〜ン」という軽い音がします。さらにそういう人の打ち込み音はだいたい「カン、カン」と2回鳴ります。

 

また「圧」の方向も違います。受ける側の頭の上を滑るように上がっていく打ち込みは総じて軽く、主に剣道をやっていた人に多いように感じます。

 

しっかりした打ち込みの音は「ミジッ!」(表現が難しい)といかにも重い音がします。音は2度鳴りません。また「圧」は受ける側の腕から胸の真ん中を通って踏ん張っている後ろ足方向に向かって突き抜けていきます。

 

ただ最近はあまりこの稽古をしません。木刀が折れるか手首の骨を折る恐れがあるからです。決して大袈裟な話ではありません。

 

この稽古を始めた頃にはそんなことは想定しておらず余裕で構えていました。ところが打ち込み稽古を始めて半年くらいしたある日に最年長者Kさんの打ち込みを受けて手首を痛めました。それ以来は危険を感じてせいぜい50%くらいのパワーでやることにしました。それでも結構な「圧」を感じます。

 

以前、この静稽録で紹介しましたNHK番組の「明鏡止水〜武のKAMIWAZA〜」でMCの岡田准一氏が木刀で打ち込みをやった時に木刀が折れました。木刀が折れるなんてと思われるかもしれませんが、正しく「圧」が伝わる振り方をすれば木刀は割と折れます。