地球温暖化と日本刀

日本刀の作刀過程の中で印象に残るシーンの一つに「焼き入れ」があります。

 

以前に見せて頂いたことがありますが、なにも見えない暗闇の中、真っ赤になった鉄を水の中に入れる瞬間は神秘的でもあります。

 

この「焼き入れ」の水温は秘中の秘と思っていましたが、川崎晶平刀匠は自身の著「テノウチ、ムネノウチ」(双葉社)の中であっさりと語っています。

 

川崎刀匠の相州伝は湯で焼き入れをするらしいのですが、夏はその湯加減が難しくなっているそうです。

 

「まだ信州の親方の元で仕事をしていた頃は、焼き入れの日の夕方になると陽の当たらない場所に置いてある大きな水桶から、焼き入れ用の水をバケツで焼き舟に移していたものだ。陽が落ちて暗くなるのは十九時を過ぎるので、先に夕食を済ませ、親方が一休みしている間に火床に火を熾し、レンガほどの大きさの鉄の塊を三つほど放り込んで真っ赤に焼いておく。これを焼き舟の水に入れて水温を上げていた。」

 

しかし、最近の地球温暖化で変わってきていて「近年の夏はこの焼き入れの湯加減の調整に苦労する」と語っています。

 

湯加減が違うと何がどう変わるのでしょうか?

「錵の粒の冴え、明るさとその数だ。〜中略〜もう一つは色。」

 

「最近では最初から常温の水だけで焼き入れするようになった」そうです。本の中では親方が湯温を感じとるのは指先ではなく掌であったとまで書いています。

 

こんなに詳しく書いても大丈夫なのでしょうか?

書いても他の人には絶対に出来ないという自信があるから書いているのでしょう。そんな自信がビリビリ伝わってくる本です。

 

それにしても地球温暖化が作刀現場に影響を与えているということは、おそらく絵画、陶芸、日本家屋、漆器、日本酒、日本食などあらゆる繊細な日本文化にも影響を与えているのであろうことが容易に想像出来ます。

 

後継者不足も大変な問題ですが、このままでは遠くない将来に日本の文化基盤は地球温暖化によって破壊されてしまうかもしれません。