照らしても見えないもの

昔、夜中に高知から松山を車で走ったことがあります。四国には東西に貫く四国山地がありますので、峠越えをしなくてはなりません。夜中の山道走行は不安で、一刻も早く目的地に到着したいと思わずスピードを出していました。

 

峠に差し掛かった時でした。山の空があまりにキラキラ輝いていたので、まさかUFOか?と思って車を止めました。

 

なんと!キラキラしていたのは星でした。夜空にはこんなにも美しく輝く星がたくさんあったのかとその時初めて知りました。

 

最近は街が明るくなったせいか、はたまた大気汚染のせいかはわかりませんが、あまり星が見えません。

いや、もしかしたら老眼のせいかも知れません・・・

 

そう言えばこんな話を聞いたことがあります。

 

千葉周作が門弟を連れて品川へ魚釣りに行った時の逸話です。その日は結構な釣果があり、夢中になって釣っているうちにかなり沖に出てしまったそうです。既に陽も落ち始めたので急いで帰り支度をしましたが、間に合わずにとうとう周りは真っ暗闇になってしまいました。

 

さてどっちの方角が陸なのか?

 

周作は松明をどんどん燃やして四方を照らして陸を探しますが、全く見当がつきません。そしてやがて松明が尽きた時、あたりが真っ暗になるにつれて闇の中にくっきりと陸地の影が見えてきたそうです。

 

千葉周作が後日、この話を知人の漁師に話したところ、その漁師はこんなことを言ったそうです。

 

 

「松明では陸は見えません。松明は近くを照らすもの。遠くを見る時は返って光が邪魔をします。そんな時には私たちは松明を消すのです」

 

 

暗いからと明るくするとかえって見えなくなるものもある

 

私はこの話を初めて聞いた時、オチは北辰一刀流の千葉周作だけに松明が消えたことで北辰(北極星)が見えて方角がわかって助かった!となるのかと思ってしまいました(笑)