土芥寇讎記

江戸の元禄期に書かれた書物に「土芥寇讎記」というのがあります。

「どかいこうしゅうき」と読みます。

 

「土芥」とはゴミのことで「寇讎」とは仇のことです。「土芥寇讎」は孟子からの出典で君子が臣下をゴミの様に扱えば臣下は君子を仇の様に見るようになるといった意味なんだそうです。

 

そもそもこの書物は幕府隠密による大名の素行調査報告書なのではないかという説があって世の中にはあまり出回る様な書物ではなかったそうです。

そんな本こそ面白そう、読んでみたい!と思っていました。

なんと、ありました!

 

その「土芥寇讎記」を読みやすくまとめた磯田道史著の「殿様の通信簿」(新潮文庫)です。

 

一番意外だったのは浅野内匠頭の「素行」です。

本によれば

 

「長矩、女色を好むこと切なり」とあります。

 

「女色を好む」というのは珍しいことではありませんが、まあ「切なり」というくらいですから、推して知るべしです。

「婬乱無道」とまで書かれています。

 

そしてそれがあの浅野内匠頭ということになると、かなりイメージが崩れます。どこまでも映画やドラマの中の「忠臣蔵」イメージですが・・・

 

さらに驚くのはそんな「婬乱無道」の主君に諫言しなかった大石内蔵之助を「不忠の臣」だと名指しで非難していることです。

 

あの忠臣の代名詞のような大石内蔵之助が「不忠臣蔵」とは驚きました。

 

「土芥寇讎記」が本当に幕府隠密の書いた素行調査報告書だとすれば、それなりに真実味があります。

 

やっぱりイメージ崩れますね。

 

浅野内匠頭の他にも水戸黄門などの有名大名のことも書かれていて面白いです。

教科書的なイメージしかない大名たちのリアリティが迫ってきます。