江戸時代の試斬会

静稽会は基本的には毎月試斬会を実施しています。

昨日はその試斬会の日でした。試斬会は静稽会発足以来、すでに相当な回数を実施してますが、やはりいつまでも慣れません。無事に終わってホッとしているところです。

 

私たちの試斬会では畳表を巻いて水に浸したものを斬りますが、江戸時代の試し斬りは罪人の処理死体を斬っていました。

 

結構凄惨な状況が資料にも残っています。処理死体が貴重だったこともあり、試し斬りは私たちが想像するよりも遥かに細かく切り刻んだようです。

 

また、試し斬りには検分役がいたらしく「検使役」と呼ばれていました。

 

出羽国庄内藩士小寺信正の書いた「志塵通」にはこんなことが書いてあります。

 

「凡そ切れ口を見るは、手を入れて骨の切れやうをさぐり見るなり」

 

絶対に「検使役」はやりたくないですね。

 

試し斬りでは何をどう斬ったかが問題にされているわけです。

 

「よく切れてはなれたるは、あばら骨居所にありて切れはなるるなり。切れの鈍きは骨と骨寄り合いて居所に居らぬなり」

 

要は斬り口に手を入れて骨の具合を確認すると、きれいに斬れている場合は骨は位置を変えずにその場でスパッと斬れているが、ダメな斬りは骨と骨がくっついて元の位置にないと言っているのです。

 

元々は刀の性能確認のためだった試し斬りはこの資料が書かれた享保年間には武芸の一種とされていたようです。

 

つくづく江戸時代の武士に生まれなくて良かったと思います。

 

静稽会の試斬会でも袈裟斬りの場合など畳表の上の部分が遠くに飛ばずにストンとそのままの状態で落ちる斬りは手応えも無く、斬れていないのではないか?と一瞬戸惑う時があります。実はこれが一番綺麗に斬れた時です。さらに上手く斬ると刀だけが斬り抜けて巻いた畳表は一瞬そのままの状態で残ります。しばらくすると上が滑り落ちます。

 

ただ静稽会の試斬会はただ斬れば良しとはなりません。普段稽古している形や動きで斬ることが求められます。

 

何をどれだけ斬るのか?

刀のどの部分でどこを斬るのか?

斬る前後の守備は保たれているか?

姿勢は保たれているか?

斬り口はどうか?

など様々なチェックをしながらの試斬会です。

そしてなにより心を磨く稽古になります。