凄み

一刻 <手に筆> 

木彫家・前原冬樹 作

 

ここで作品をお見せできないのが残念です。

興味のある方はインターネットで検索などしてみて下さい。

 

筆を持って作業する自らの手を写した木彫の写実を突き詰めた超絶技巧の作品です。しかも一本の木から接ぎ目無しで彫り出した作品と聞くとさらにびっくりします。

 

緊張の中心である手と筆の部分から離れていくにつれてその存在そのものが消えていくように手首から腕へと木材そのものがむき出しになっていきます。

 

凝縮された緊張とそこから解き放たれた緩和の対比が素晴らしい作品です。

 

木彫家の前原冬樹さんは元ボクサーです。

10年間リングで闘い続けたそうです。

 

そんな彼が選んだのは7浪の末、32歳での東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻入学。

その後、木彫に転じて日常の中の朽ちていくものを中心に作品を作り続けます。

 

朽ちていくものへの愛着と生きることへの執着と緊張、そこから解き放たれようとするエネルギーが作品に溢れています。

 

格闘家であったことが作品に反映されていると感じます。

作品の凄みは彼の生き方そのものです。

 

いろいろな意味で参考になります。

 

ちなみに彼の作品の中には一刻 <刀>もあります。

こちらも凄まじい作品です。