今日は役所広司さんが演じる映画「素晴らしき世界」の話です。
若い頃から少年院を渡り歩きヤクザの世界へ。そして行き着く先はやはり刑務所です。それまでの人生の大半を塀の中で過ごした男が出所して「普通」の人になろうとしますが・・・
役所広司さんが普段は柔和な男の奥底にある狂気を見事に演じています。喧嘩で相手に噛み付いた時の完全にいってしまった眼に鳥肌が立ちました。
この映画は佐木隆三さんの「身分帳」が原作です。映画を観た後に原作も読んでみました。実話を元にした作品だそうです。
長い刑務所暮らしから出て来て娑婆で暮らすことはなかなか難しい?・・・というよりも私たちの生きている曖昧で穏やかな日常は男にとってはむしろ生きにくい世界のようです。
最近、会社を定年退職した人たちがこんなことを言ってました。
「それまでの忙しかった日々からやっと解放された!」
「神経をすり減らす日々とお別れだ!」
「耐え難きを耐えてやっと自由の身となった!」
そしてそんな自由の身を謳歌するように退職祝いと称して連日酒を飲み、美味しいものをたらふく食べ、二日酔いで寝ている日々・・・
佐木隆三さんの「身分帳」にこんな一節があります。
「「いや、止めておこう」
飲む気になれず、手を引っ込めた。
-中略-
長い拘禁生活と旭川の寒さで衰弱しているのに、連日の出所祝いで酒びたりになり、女を抱いているうちに3ヶ月ほどで死ぬ話は、飽きるほど聞かされた。」
私の周りでも定年退職した途端に体を壊したという人の話はよく耳にします。
最近定年退職された方々!
どうも手放しの「非日常的な自由」は体に良くないみたいですよ〜!
3月末で退職された方はもうすぐ3ヶ月が経ちます。
そろそろ「日常的な自由」を取り戻した方がいいかもしれません。
映画でも元々血圧が高かった男は出所してほどなく自宅で倒れて死んでしまいます。
「素晴らしき世界」は穏やかで曖昧な日常の中にあるのかもしれません。
この機会に静かに楽しく稽古をする「素晴らしき世界」はいかがでしょう。