百尺竿頭に一歩を進む

静稽会にはそれまで武術などやったことのない人も入会してきます。

少し動きに慣れてきて、なんとなく形も覚えて来たなあと思っていると稽古に出て来なくなってしまう・・・あんなに熱心に稽古に来ていたのに・・・

 

稽古の本当の面白さはそこからのはずなんですが・・・


「自分はもう出来るようになった」と自身が納得してしまうともうそこで稽古は終了です。

 

例えば生まれてからハイハイをし、ようやく立って歩けるようになると「歩く」ことが当たり前になっていきます。

その当たり前の「歩く」日常動作を何万回繰り返してもそれ以上の「歩く」は見込めません。

そしてその日常動作の中に楽しさも埋没していきます。

 

「歩く」ことを深く考え、さらに大きくレベルを上げるためには日常動作で「歩く」ことさえ否定する思いがないと自分の中で「稽古終了!」となります。

 

私たちは武術という「術」を稽古しています。

日常動作の延長線上で手順を覚えた形が出来た程度では到底「術」とは言えません。

普通の人には到底出来ない、日常動作からかけ離れた異次元の動作を求めています。

 

そんな武術の門の向こう側には立ち尽くすような無限の世界が広がっています。

その門の一部がチラッとでも見えると稽古はもっともっと面白くなるはずです。

 

「百尺竿頭に一歩を進む」

 

これは稽古を始めて4〜5年経ったころに薩摩剣の使い手Hさんから言われた禅語です。

     

ぜひ長く長くもっと長く、出来るだけ長く稽古を続けて欲しいと思うのです。

稽古を長く続けているとある時、すべてがつながっていると気づく瞬間がやってきます。

さらに世界が広く、深くなります。