稽古に合った鍛え方

話題作の映画「国宝」に出演されているダンサーで俳優の田中泯さんがこんなことを言っています。

 

「振り付けされた動きを体を鍛えてできるようにしていくのも一つの方法で私はそれを否定しない」

 

しかし自分は「ダンスのために作る体で踊るのは違うと思っている」

 

彼は40代のころから山梨で農業を始めます。

「野良仕事で体を作り、その体で踊る」

それが彼の行き着いた答えでした。

 

彼の踊りは踊る場所と深く結びついています。

だから自分の「踊り」を「場踊り」と呼びます。

 

場所で感じたものをそのまま受け入れて踊るので振り付けは一切ありません。

 

彼は若い時にはクラッシックバレエやアメリカンモダンダンスを学び、その後舞踏家土方巽にも影響を受けています。そんな彼の「体」から発するモノが「場」と共鳴して「場踊り」になるのだろうと思っています。

 

さらに彼は「一番大事なのは競争のためにやってはいけない。踊りのためにやらなければいけない」と言っています。

 

きっと競争してしまうと心身が意識の対象になってしまうからだろうと思います。

分野は違いますが、私は彼の考え方に共感しています。

 

田中泯さんのようなわけにはいきませんが、私も特別な筋トレではなく多少負荷のかかる日常生活の動きで稽古に耐えうる体を維持するよう努めています。

 

先年スポーツに関する資格取得のために筋トレなどの知識や実技を学びましたが、むやみな鍛え方をすると稽古の動きとは相反してしまうと実感しました。

これはヨガにおいても感じたことでした。

 

やはり長い目でみると日常生活の中で培われた鍛え方の方が稽古にも年齢にも馴染むのかもしれません。

 

<参考>

2013年8月13日付静稽録「田中泯」

2024年11月16日付静稽録「たそがれ清兵衛の小太刀」