非力の力

健美居合会は静稽会の居合エッセンスを抽出した稽古を通じて健康と美しい姿勢を保つことを目的とした会です。

ほぼ男女同数で平均年齢は65歳くらいでしょうか。

 

その健美居合会にはすでに3年近く稽古を続けている最高齢82歳の男性がいます。

稽古を始める前はやや心配もしましたが全くの杞憂でした。

今も20歳近くも若い人たち(とは言ってもその人たちも60歳台なのですが・・・)と同じ稽古量をこなしています。

 

また当初は主に女性会員たちから「木刀は重い」という意見があり、それを受けて細身の棒を使って稽古していましたが、その女性たちも今では木刀を使って結構な稽古量をこなしています。

しかもみなさん、フォームが良い!

いや非力だからこそ良いフォームになるのだと言い換えた方がよいかもしれません。

 

「理」に適ったフォームの習得にはそれなりの稽古時間が必要になりますが、負荷が体の一箇所に偏らないのでケガも少なく、かつ小さい力で大きなパワーを出すことが出来ます。

 

逆になまじ筋力がある方などはどうしても普段使いの筋力に頼りがちです。

(実は本人が思っているほど筋力が無いのがさらに問題です)

確かに短時間の稽古で一見似たようなことは出来ますが、実際にはなかなか「理」に適ったフォームにはなりません。

 

今後、年齢を重ねると筋力はどんどん低下していきますので、同じやり方で稽古を続けているといずれ肘の故障などにつながるのではないかと心配になります。

 

また腕力に頼る人は素振りや抜刀を「理」ではなく勢いでやろうとするので、刀のコントロールが効いていません。誤って他の人をケガをさせてしまうのではないかという心配もあります。

 

そう考えると非力なことを自覚している高齢男性や女性の方が自然に「理」に適ったフォームに転換しやすいと言えます。

 

今年、ノーベル賞を受賞した京都大学北川進教授は色紙に「無用の用」という荘子の言葉を書くそうですが、居合の場合は「非力の力」と言ってよいかもしれません。