あるバレリーナの方が正しい姿勢を指導する時に「首の前を電車が通る」と表現していました。
面白い表現です。
顎を突き出さず、引き過ぎず、首の後ろが真っ直ぐ上に引っ張られるような感覚を伝えているのだろうと思います。
人それぞれの感覚表現は独特で面白いです。稽古でもどうやったら自分の感覚が伝わるかと考える時があります。しかし感覚はどこまでも自分のものなのでなかなか伝わらない場合もあります。
「胸を開く」という動作と「肩甲骨を開く」という動作は一見矛盾するように聞こえますが、この二つの動作を同時に行う時にどう表現したら良いか?
稽古では「吊り下げられたマリオネットのように」「胸を落とす」などと表現したりすることもありますが、なかなかうまく伝わりません。
もしかしたら「首の前を電車が通る」という表現もアリなのかもしれません。
股関節や仙腸関節などの腰回りの感覚表現はさらに伝わりにくいように思います。
柳生三厳(十兵衛)は「月之抄」という書物の中で
祖父の柳生宗厳と父の柳生宗矩の違いを比較してこんな風に書いています。
「亡父(宗厳)の用は尻をすぼむるなり」
「老父(宗矩)の用は尻を張るなり」
え?どっちなの?
これに対して三厳(十兵衛)は
「すぼめたるよりは張りたる方、身も手もくつろぎて自由なる心ありとなり。しかれども、これはいずれにても、主々が用えん方然るべきなり。詞は替われども心の置き所一つなり」
「自分はどっちかというと張る方かな〜でもみんなそれぞれでえ〜んやで〜」と言っています。
なんや、どっちでもええんかい!
静稽会のHさんと私の感覚表現の違いはこの辺りかもと思い当たったりします。
結局は受取側がたくさんの表現の中から自分が最も感じ取れるものを掴むしかないようです。
まあ一休さんは琵琶湖の船上で暁天坐禅中にカラスの鳴き声を聞いて悟ったそうですから・・・
♪やさしさに包まれたなら♪きっと♪目にうつる全てのことはメッセージ♪
(by ユーミン)
と言ったところでしょうか。
